中尾先生のアートレクチャー、今月は20世紀初頭に美の世界に大きな揺さぶりを与えた抽象絵画の二人のアーティストに迫ります。
先生からのご案内文をどうぞ!
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第64回《〜これまで誰も教えてくれなかった〜『絵画鑑賞白熱講座』》
抽象絵画への道 モンドリアンとマレーヴィチ
先週の土曜日から東京ステーションギャラリーで《没後90年記念 岸田劉生展》が始まりました!初期から最晩年までの作品を過不足なく鑑賞できる、文字通りの回顧展です。通常軽視されがちな京都・鎌倉時代の《日本画》もたくさん出展されています。
また、劉生が率いた美術団体《草土社》の名の通り、土系の絵具のイメージの強い劉生が、最晩年の1929年に描いた赤と緑の対比も鮮やかな油彩画が3点見られるのも貴重です。劉生はこの年の12月に38歳の若さで亡くなってしまうのですが、もし彼がもっと長く生きていたら、カラリスト劉生という展開もあったのかなと思わせる美しい絵です。
岸田劉生 卓上花果 1929年1月3日 個人蔵
さて、次回は劉生の写実主義から一転、《抽象絵画への道》第2弾としてモンドリアンとマレーヴィチを鑑賞します。
前々回ではカンディンスキーの作品の鑑賞とともに、形と色彩の独立=抽象画の誕生というプロセスを見てきました。
誕生にともなうカオス的な表現がカンディンスキーの特徴でもありましたが、次回のモンドリアンとマレーヴィチはそれぞれまったく違う方向性でありながら、ともに抽象画の極致、これ以上ない抽象の世界に到達したとも言える画家たちです。
モンドリアンは我々の視覚世界をすべて、水平線と垂直線による黒線のグリッドに赤青黄の3原色と白と黒を配置するというやり方に還元してみせました。彼の晩年の代表作《ブロードウェイ・ブギウギ》には抽象画でありながら、ニューヨークという街の活気と喧騒までもが表現されているかのようです。
モンドリアン 赤・青・黄のコンポジション 1930年
モンドリアン ブロードウェイ・ブギ・ウギ 1943年
マレーヴィチは立体主義、未来主義を推し進めた結果、白い地の上に黒い四角を描いただけの《黒い正方形》、それをさらに推し進めた《白い地の上の白い正方形》という極北の表現にいたります。まさしく、シュプレマティスム(絶対主義)ですね!しかし、ここまでくると、絵画が色や形の造形云々ではなく、異次元の世界をわれわれに伝えるシャーマンのような存在になっている感じもします。
マレーヴィチ 黒い正方形 1915年
マレーヴィチ 白の上の『白の正方形』 1918年
次回の講座では、一見対極にあるような劉生の写実絵画とモンドリアンやマレーヴィッチの抽象画に共通する精神性にも注目して鑑賞をすすめたいと思います。
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*中尾陽一主宰
9月29日(日)開催 第64回これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞白熱講座
13時から15時30分まで(ティータイム休憩あり)
お申し込みは、こちらからどうぞ→