日本の洋画をシリーズで鑑賞しています。9月の中尾先生「絵画観賞白熱講座」は、日本の洋画家、中村彝です。
私の学生時代、歴史の授業は、現在に近い歴史的事実ほどしっかり習っていない。近い時代がよくわかっていないと、今現在の理解がぼんやりしてしまいます。それと同じく、絵画を味わい深く鑑賞しようと思うと、実は、この明治大正時代から昭和の美術はしっかり観ておきたいところ、と実感しています。さて、今月は・・・
第119回 大正の洋画(2)中村彝と中村屋サロン
明治40年(1907年)に創設された「文展」(文部省美術展覧会)は、第一回展こそ和田三造の《南風》という力強い作品を産み出しましたが、それ以降はたいした収穫もなく、外光主義を標榜する審査員の目を意識した作品が主流をしめ、日本洋画のアカデミズムの牙城となって行きます。
その形骸化した文展にあって一人気を吐く活躍をしたのが、中村彝(つね)です。

彼は、大正3年の第8回文展に《少女》を出品し三等賞を受賞、大正4年の第9回文展では《保田龍門像》で二等賞、大正5年の第10回文展では《裸体》、《田中館博士の肖像》で特選を受賞しました。

中村彝 少女

中村彝 田中館博士の肖像
そして、結核という病魔と闘いながら大正9年には日本近代美術史上の傑作《エロシェンコ氏の像》を描きますが、大正13年に37歳という若さで亡くなります。

エロシェンコ氏の像
早くに両親や兄姉を亡くし天涯孤独の身であり、自らも10代から結核を病んで苦しい生活を送っていた中村彝を支えたのが、新宿でパン屋を営んでいた相馬愛蔵、黒光(こっこう)夫妻です。相馬夫妻のもとには、中村彝のほかにも彫刻家・荻原守衛(禄山 ろくざん)をはじめ、中原悌二郎、戸張孤雁(とばりこがん)若く前途有能な芸術家たちが集まり、《中村屋サロン》を形成していました。
大正の洋画(2)では中村彝の生涯と作品を中心に、中村屋サロンに集まった芸術家たちの作品を鑑賞します。

荻原守衛(禄山) 女

中原悌二郎 若きカフカス人
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※ この講座は絵の知識を競うものではありません。絵を見る力が自然に身につく楽しい講座です。
※ いわゆる美術史の流れを知らなくても、その場で向き合った絵をどう感じたか、どう見るか、そしてそれをどう自分の言葉にするかを「わいわいがやがや」 の寺子屋スタイルで学びます。
※ 通史的な講座ではありませんので、いつからでも、興味のある画家の講座の時だけでも、 お気軽にご参加ください。
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【講師の紹介】

中尾陽一
国際美術展プロデューサー
早稲田大学大学院修士課程終了(西洋美術史専攻)
【展覧会企画】
アート・ライフ、イデア・ジャポン、ウーゴズという3つの展覧会企画会社で、美術館を対象とした国際美術展のプロデューサーとして、数多くの展覧会を日本と海外で企画する。
企画した展覧会:モディリアーニ展、ユトリロ展、ルオー展、ルドン展、ミロ展、シスレー展、ブーダン展、クールべ展、ラファエル前派展、ビアズリー展、スコットランド国立美術館展、ヴェネツィア派展、タピエス展、ホックニー展、ジム・ダイン展、ロバート・メイプルソープ展、キース・ヘリング展、百花乱々展(メープルソープ&アラーキー)、パリで開催されたルオー展、韓国でのモディリアーニ展など多数
【絵画鑑賞講座】
展覧会プロデューサーとして様々な美術館、アート作品に直に接してきた経験をもとに、2011年からオリジナルの絵画鑑賞講座(《これまで誰も教えてくれなかった『絵画鑑賞入門講座》、2018年からは『絵画鑑賞白熱講座』に改称)の開発を手がける。
これまでにオリジナルのアート鑑賞講座をリアル、オンラインで300回以上開催
【対話型鑑賞】
◉東京都品川区美術図工部会、日本青年会議所、上智大学学生センター、キリンアカデミア等で講演・講座の実施。
◉山梨県立美術館からの依頼で、学芸員、ボランティアガイドの方々を対象とした対話型鑑賞法の研修セミナーを実施。2021年度、2022年度、2023年度(中・上級)
◾️9月22日(日)13時〜15時 第119回これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞白熱講座
日本洋画の流れと俊英たち 日本洋画の流れと俊英たち 大正の洋画(2) 中村彝と中村屋サロン
|講師|中尾陽一
|会場|プロトマニア と オンラインzoom
|参加費|5,500円(税込)/7,700円(税込テキスト付き)
*ほか、オンラインは2,200円(税込・視聴とチャットのみ)あり。