今日はクリスマスイヴですね〜東京は風が冷たい。お仕事の方もお休みの方も、暖かくしてお過ごしください。
さて、昨日は雨降る麻布十番で、今年最後の中尾先生アートレクチャーでした。テーマは「ムンクと叫び」。「叫び」という絵は世界的に知られた作品ですけれど、ムンクがどんな画家なのか、他にどんな絵を描いていたのか、よく知らなかった。知らない方は、案外、多いかもしれませんね。
中尾先生講座は、今回、九段下のプロトマニアではなく麻布十番のカフェ・カリーズで行いました。
このカフェはね、地下水を汲み上げていて、そのお水でコーヒーをいれてくれるんです。カフェの真ん中にガラスの窓があって、地下の様子を見ることができます。
さて、それではムンクです。ムンクはゴッホ、クリムト、ロートレック、マチスなどと同時代の画家。軍医の息子として生まれましたが、母をはじめ、幼少の頃から身近な人の死が生涯つきまといました。パリに留学して最先端の印象派の作風に触れたムンクは、それまでの作風を捨てて「呼吸し、感じ、苦悩し、愛する、生き生きとした人間を描く」と宣言します。
叫びは、4パターンあります。ムンクは多作。オスロ美術館にはなんと2万点以上のムンク作品が収蔵されているんですって。
28歳にしてノルウェー国立美術館に作品が買い上げられ、画家として有名になる一方で、その作風に対しては激しい反発もありました。個性的な恋人たちとの日々、制作。そんな中であの「叫び」は生まれました。この作品は見る者を不安にさせ、孤独や疎外感、そして救いを求める叫びを感じさせますが、実際ムンクが描いたのは、個人的な心情を超えた自然の叫びだったようです。
幼い時に母や姉の死を体験したムンクは、女性との一体感を求めながらもそれを怖れる複雑な心理。
これは有名な「思春期」という作品。
休憩には、地下水でいれたコーヒーや紅茶と、クリスマスおやつ。
そしてカフェのマダムから地下水の説明。この辺りは伊達藩下屋敷だったそうです。そしても〜っと前、麻布は海の中〜♪ 近所の「竹の湯」(都内温泉!)のお湯が黒いのは、海藻やら魚やらが長い間に炭化したからなんですって。
・・・などなど楽しい麻布豆知識を伺って、後半へ。
「ムンクの「星月夜」はどことなくゴッホの作品と似ていませんか?」と質問があれば、「ゴッホとは同時代ですが、絵の雰囲気は違いますね。作品としては互角だと思いますが」ゴッホは南仏、ムンクは北欧の澄み切った夜空。
左はサロン絵画のブグローが描いた「クピドとプシュケ」右は、ムンク。
ムンクは、物語を美しいままではなく、テーマをそのまま自分に置き換えて、自身を表出させた作品を描く、自分のストーリーに変えていく。
クピドってキューピットなんですが、ムンクのキューピット、可愛くないし、美しくなくて、怖いですよねぇ。
ムンクは家族の不幸や自身の精神疾患もあったけれど、絵の制作も人生自体もスタミナいっぱい。フリーズという生のイメージの連作を展示した空間を作ったり、一つパターンができるとそのヴァリエーションで作品を展開したり、版画も大作もあって多作。病的なイメージとは裏腹に、思い切り人生を生きていたように思います。
参加者の方から、「ムンクの人生は激しい。けれど、上から目線ではなく、人間はそれでもオーケーだという本音さがあって、それが私たちへの癒し」(応援?)になっているという意見がありました。
確かに、人間のきれいな部分や理想を描くのではなく、家族の死や精神疾患など彼自身が抱えていた人生の条件を残らず使って絵画へと昇華し、思い切り生きた人なのかもしれませんね。だから、こんなに広く長く人気があるのでしょう。
今年最後の中尾流も、充実のひと時でした。
12月の参加者の皆様、そして今年一年中尾先生のアートレクチャーに来てくださった皆様、ありがとうございました。
来年も中尾先生とご参加お待ちしています! 新春の中尾流は、
2019年1月27日(日) 13時から15時30分
フォーヴの画家「マルケ」
です。詳細は後日!お楽しみに〜