中尾先生の絵画鑑賞白熱講座、日本の洋画をシリーズで鑑賞してきましたが、秋はちょっとひと息入れて、現在、東京都美術館で開催している展覧会をみんなで対話しながら鑑賞します。先生からのご案内をどうぞ・・・
第120回と第121回は《〜これまで誰も教えてくれなかった〜『絵画鑑賞白熱講座』》のスペシャル・バージョンとして、注目の展覧会をみなさんといっしょに対話型鑑賞します。
第120回で取り上げる展覧会は、東京都美術館で開催中の《田中一村展 奄美の光 魂の絵画》 です。
田中一村(1908 – 1977)は近年ますます評価が高まる異色の日本画家です。
子供の頃から南画(水墨画)を良くして神童と騒がれ、10代で南画家として自立できるだけの実力を身につけていました。そして、17歳で東京美術学校に入学します。同期には、のちに大家となり文化勲章を受賞する東山魁夷や橋本明治がいましたが、一村はなぜか東京美術学校をわずか2ヶ月で退学してしまいます。

数え年8歳の一村が描いた《菊図》

東京美術学校に入学した17歳頃に描いた《蘇鐡と躑躅(そてつとつつじ》
その後は独自の道を歩み、日展や院展にも作品を送りますが、落選を繰り返し、彼の作品が公に評価されることはありませんでした。
50歳を過ぎた頃に何を思ったか、奄美大島に移住し、そこで大島紬の染色工として働きながら奄美の自然、海、植物や鳥をテーマに創作活動を続け、彼の地で寂しく69歳の生涯を終えます。

代表作《アダンの海辺》
生前には注目されることのなかった一村ですが、没後7年となる1984年にNHK日曜美術館で「黒潮の画譜~異端の画家・田中一村」が放送され、その独特の画風と生きざまが紹介されたことにより、一躍脚光を浴びることになります。
生前には一度も展覧会が開かれなかった一村ですが、それ以降は全国巡回展が何度も開催され、2001年には彼が晩年の20年近くを過ごした奄美大島に《田中一村記念美術館》がオープンしました。
田中一村は、生前全く評価されなかった点でゴッホに、南の島へ移住して制作に励んだことでゴーギャンに、亜熱帯の植物や鳥を題材に大胆な構図の作品を制作したことでアンリ・ルソーにもなぞらえられます。
今回東京都美術館で開催中の《田中一村展 奄美の光 魂の絵画》は一村の幼少期から晩年までの250点に及ぶ作品と50点を超える資料で構成された、田中一村展の決定版とも言える展覧会です。
この展覧会を機会に、生前の一村はなぜ認められなかったのか、一村の作品が現代の私たちにアピールするのはなぜか、などの考察を加えながら、近年ますます評価の高まる田中一村の世界を堪能しましょう!
文責:中尾陽一
◾️10月27日(日)13時〜15時 第120回これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞白熱講座
『田中一村展〜奄美の光 魂の絵画』(東京都美術館で開催中)を対話型鑑賞しよう!
|講師|中尾陽一
|会場|プロトマニア と オンラインzoom
|参加費|5,500円(税込)/7,700円(税込テキスト付き)
*ほか、オンラインは2,200円(税込・視聴とチャットのみ)あり。