出会いと別れ

九段下は、このところ毎日賑やかです。武道館は日替わりで次々大学の卒業式。桜は入学式の頃、咲くかな。

昨日、ちょっと悲しいお知らせがありました。中尾先生の絵画観賞白熱講座に、長い間参加してくださった方が亡くなられたのです。その方のことは、ジャーナルに書いたことがあるのですが、90代になるまでずっと、九段中坂をえっちらおっちら登ってプロトマニアに来てくださり、中尾先生の講座を心底、楽しんでくださった老紳士でした。

講座に参加したばかりの頃のその方は、とにかく知的で多くの知識を持っていらして、勉強が楽しくて仕方ないご様子でした。毎回、テーマの画家や作品について本を読み込み予習をして臨む熱心さ。でも、白熱講座は知識が多いことよりも、その場でどう感じたかを大切にしているので、それをわかってほしいなぁと内心思って発言を聞いていました。

毎回、お勉強もしつつ、その方はだんだん変化していきました。その時、すでに80代。中尾先生からの問いかけや皆さんとのやりとりを重ね、その方は頭と同じくらい、心で絵を見ることを始めました。その変化の鮮やかで素晴らしかったこと! 最後の頃には、みずみずしい感性と先生へのリスペクトと品のある知の言葉で、講座にはなくてはならないほどの存在感でした。今でもその方の柔軟な感性と、新しいことを受け入れるキャパシティと、何より学びへの純粋な情熱は、私の中でダントツに光っているのです。

中尾先生の講座は、2014年3月から毎月コツコツ続けてもう10年。いろんな出会いと別れがありました。別れていった人々は、もう会えないし話せないけれど、思い出せば実にイキイキとした存在で、これからもずっと心の中にいるのだなぁと感じました。

◾️4月13日(土) 14日(日)10:30~18:00【対話型鑑賞(VTS)】のファシリテーター養成集中講座 (2日間)リアル開催

◾️4月19日(金)18時30分〜20時 鑑賞のための美術史講座「近代ヨーロッパ絵画の流れ(7) ポスト印象派(セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ)」

◾️4月28日(日)13時〜15時 第114回これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞白熱講座 日本洋画の流れと俊英たち(1) 草創期:高橋由一とその時代