春には3つの訪れがあるそうです。光、音、気温。日が長くなる光。雪解けの音。そして気温。
今日は明るい春の日差しに北風がピュ〜。
今朝、九段に来るときに電車の中で席をゆずった年配のご夫妻。少し深刻そうな雰囲気で、奥様は少し具合が悪そうでした。ご主人は、私にとても丁寧にお礼を言ってくださったのですが、お二人の様子がなんとも悲しげで。ご主人は、私が電車を降りる時にもわざわざ帽子をとってお礼を言ってくださったので、私も「お気をつけて」と言って下車しました。電車の中でほんの束の間触れ合っただけの人たちだけれど、人にはドラマがあるのだなぁと感じました。
何か特別な状況の時に、ふと耳にした音や目に入った誰かの笑顔で、下を向いていた顔を上げることができたり、胸のつかえが通ったりすることがあります。私が一番覚えているのは、竹橋の近代美術館の常設展で目にしたパウル・クレーの絵。
このことは以前もジャーナルに書いたことがありますが、仕事でどうにも苦しくて仕方ない時に、美術館の展覧会に行き(それも仕事の一環だったと記憶しています)、目的を済ませたその後、ふらふらと常設展示のフロアを見ていた時でした。すぐに仕事場に帰りたくなかったから、常設展示も見て帰ろうくらいの気持ちだったと思います。
ふと小さな油絵が目に入って、その絵の前に立ったとき、それまで身体が重くてどうしようもなかったのに、目が覚めたように細胞一つひとつが開いて、息ができるようになったのでした。それほどまでの感覚は、初めてでした。その時、芸術ってすごいと実感したのです。
こういうことは、クレーでなくても起きることだというのは、私が絵を買って部屋においたり、気に入ったうつわを用意して丁寧にコーヒーを淹れて飲んだりする時に感じることです。

何かアート作品を身近に感じていただけたり、その魅力と出会ったり、気づいていただける機会になればいいなと思って、ラブアート!展をしています。来てくださった方とゆっくり過ごして、お話を聞いたり、私の思いをお話しすることも大切にしながら過ごしています。明日は、いよいよ最終日!

川崎毅 匣(真鍮のふた)
◾️Love Art!展
2024年3月3日(日)〜10日(日)
11時ー18時 会期中無休
千代田区九段北1-12-5 市田ビル6F
phone:090-2469-4450
