沖縄戦で戦争孤児となってしまった方々の苦しみを、ドキュメンタリーで知りました。戦争は、本当にダメですよね。うかうかしていると流れが止まらなくなってしまう。単純でもいいから、いつでもどんな時も「戦争はダメなのだ」という意識だけは持っておかねば。
番組の中で、沖縄戦で家族とはぐれて孤児院に収容され、その後、親ほど歳が離れたお兄さんに引き取られたものの、とても厳しく辛い人生を送ってきたおじいさんを追っていました。彼は、あまりに辛い自分の人生に、子どもを持つことを断念して、ひとり生きていきます。再び戦争が起きて、自分のような思いをさせるのが絶対に絶対に嫌だったからです。
その方は、引き取ってくれたお兄さんのことを恨んでいたそうです。彼がお兄さん家族との生活で辛かったのは重労働や貧しさはもちろん、当時、家族全員で行くお墓参りに自分だけ連れて行ってもらえなかったこと。その思いはずっと彼を苦しめて孤独にしてきたのです。番組の最後、35年以上行かなかった自分が暮らしたお兄さん家族の家があった場所に行き、親類とも再会する、話す。

当時、一緒に労働をしたという家族の女性が話すことに耳を傾けます。その女性は「辛かったのはあんただけじゃない、私も一緒に働いたでしょう。でもあんたは可哀想だった、国は何もしてくれないよね。それで子どもを持つこともなかったね、でも私は子どもはいた方がいいと思う、そう思うよ」と。その時の彼は何も言わずに聞いていました。言葉を噛み締めていたように見えました。その後、彼は甥っ子にお墓参りに誘われました。ようやく、家族ができたのかもしれません。最後、彼はお兄さんを恨むのはやめると言ったのです。
その方の心に、どんな変化があったのでしょう。とても複雑な感情や記憶が、その方の人生を作っていたと思います。「あの辛かった時」、で凍りついてしまった心が35年間続いていたのかもしれません。あの番組の取材をきっかけに、少しだけ氷の一部が溶けたのかもしれません。小さなことだけれど、親類に会って話してみたことで、変化があったのかもしれません。
第2次世界大戦での国の戦争責任を問う裁判は、訴えた側の日本各地の国民が敗訴しています。戦争という非常事態は、その被害を国民が等しく耐え忍ばなければならないという説。戦争の時代を経て生きる人生は、怒りも悲しみもぶつけどころがない。やり場のない感情と記憶を抱えて生きていらっしゃる方たちのことを知ることは、今すぐ何もできなくても、知ることだけでも大切ではないかと思います。

▼置き去りにされた子どもたち〜沖縄 戦争孤児の戦後〜 NHK ETV特集