
梅の花があちこちで咲き始めました。来週はもう立春ですね〜。
さて、1月の中尾陽一先生アートレクチャー
は、フォーヴの抒情詩人アルベール・マルケを取り上げました。
始まりはいつものように、マルケの作品をスライドでざっと見ていきます。
マルケは、1875年フランスのボルドーで鉄道員の子として生まれました。彼は脚が悪く、内向的だったこともあって、絵を描くことが大好きな少年でした。そんな彼の長所を伸ばすために母親はボルドーからパリに出てマルケをデッサンの学校に入れます。マルケはギュスターヴ・モローのアトリエで絵を学び、のちにマティスやルオーと出会います。そして、フォーヴ(野獣派)と呼ばれる色彩豊かで即興的な絵を描く画家たちと共に制作を続けながら、高いデッサン力を土台とした安定感と、フォーヴの影響から抜けたハーフトーンの柔らかな色彩の作品を多く描きました。マティスとはとても仲が良かったそうです。単純な形や少ない筆数で絵の中の動きから表情までを描き切るマルケを、マティスは「我らが北斎」と呼んだといいます。
スライドでざっと作品を見たら、まずその印象を一言ずつあげていきます。参加者全員発言しますよ〜 思ったまま、感じたままをとにかく言ってみるのが大事だいじ♪
先生は、「ほ〜!」とか「そうですか!」とか、皆さんの言葉に驚いたり、同意したりしながら、発言者の意図をうまく捉えて、ちょこっと補足してくれたりもします。
「マルケの絵は、どこかで見たような、誰かの影響を受けたような感じがする」「美術館というよりはプライベートな空間に飾ったら良さそうな、でも個性がないと言えばないような・・・」と皆さん。率直でそのままの言葉が面白い。この絵は、「御茶ノ水みたい!」「聖橋?!」(笑笑笑)と盛り上がりましたが、1908年頃描かれた『パリのサン=ミシェル橋』でございます。
1913年 『ラ・ヴァレンヌ=サン=ティレール』
マルケの作品には、画面の中の水面の分量が多い作品が多いのですが、この水面の感じ、実にリアルじゃありませんか? 細部を細かく描いていないし、ボートを漕いでいる人だって筆でちょこちょこっと描いたのに、漕いでいるように見えるからすごい。
皆さんの意見、感想に聞き入る先生。真面目な眼差し。
中尾先生の講座は、何が正しいことかとか美術の知識があるなし関係なく、まずは「あなたはどう感じますか?」を言葉にしてみます。「わからない」でもいいけど、わかるわからないにとらわれず、なんでもいいんです、ご遠慮なく。
『青い背景の裸婦』
マルケの裸婦はピチピチな肉体美でもなく、ちょっと弛んだ胸やお腹をとてもリアルに描いているのに品がある。女性参加者は皆さん、「風景より裸婦で勝負したらもっと有名になっていたんじゃない?」と裸婦路線、絶賛。
「・・・美化した裸婦じゃないのに、女性の皆さんが支持するとは意外でした」と先生。
1935〜39年 『夜のポン・ヌフ』
この絵、いかがですか? 本当に光が光っていて夜の風景と夜の空気が伝わってきませんか?
「マルケの絵は、白黒のプリントで見ても絵がちゃんと成立しているんですよ。細部までリアルに描くのではなく、単純化されたフォルムは絵の具の点や線で子どものように自由に描かれている。それなのに写実的でそれがそれに見えるのは、高いデッサン力があり形を正確に捉えることができるから。だから絵全体が安定しているのです」
今回は、初めて参加してくださった皆さんの感想やご意見が活発に出て、全体にとっても盛り上がりました。楽しかったですね〜 皆さん、先生、ありがとうございました!
絵画におけるデッサン力とは、ものを正確に描く力だけではないんですね。次回2月は、もう一人の抒情詩人、ラウル・デュフィを取り上げて、デュフィのデッサンの魅力を探っていきます。デッサン、奥深し。
次回は、
2月24日(日) 13時から15時30分
『フォーヴ、もう一人の抒情詩人 ラウル・デュフィ』
お申し込みは、こちらからどうぞ→
*3月は、ワタクシアラカワも大好きイタリアの画家、
「ジョルジョ・モランディ」
を予定しています。ZEN を思わせる静かで熱い画家です、乞ご期待。