今この瞬間にいたら、そこは穏やかで安全地帯。
絵を描く人は、留学先のフィレンツェで出会ったひとと結ばれた。
ところがある日突然、結ばれたそのひとがこの世からいなくなってしまった。
それまではそのひとの子供を産んで家族を作ることや制作やいろいろな選択肢と共に迷いがあったものの、
その時から彼女には絵を描くことだけしかなくなった。
彼女は自分が戻るべき場所の入口をそうして見付けて行った。
子供の時から道草くんで、幼稚園の時には先生から「ちょうちょさん」と言われ、
今だにお散歩大好きな私の中では、今現在という瞬間から遠ざかり過去へ行ったり未来へ行ったり。
もうない過去へ行き、まだない未来へと動き回っては余計な思考や感情に悩みを生み出し、
それを分析して反芻しては煩わされ、あまりに遠くへ行ってしまって迷子になることもしばしばでした。
でも今、この瞬間にいることは、
何も問題などなく、どこよりも安全で、そここそが戻る場所への入口。
