ある時、気づいた、いや、気づかされた。
それは落雷のような閃光や、蒼褪めるような驚愕でもなく、
繰り返された時間と積み重ねられたことばの末、
ただ静かに、ひたひたと浸み入る。
鍵と鍵穴のように、コインの裏表のように、それはいつもそこに在った。
見えているのに、見ていない。
気がついているのに、拒んでいる。
そこに在るのに、ある かも しれないとすら思わない。
ブロックしていた壁に小さな小さな穴が開く。
堅い結び目がひとつ解けていく。
それを望んだからやってきたのだ。
鍵と鍵穴に、ことばでは尽くせない感謝。
