年末年始は一年を振り返ったり、次の一年に希望を抱いたりしますね。
私の身近では、これまでお世話になった方々が亡くなって、あらためてその方達がかけてくださった言葉や、一緒に過ごした場面を思い出すことが多くありました。
このジャーナルにも書いたことがある私のバレエの恩師も、虹の向こうに旅立たれました。子どもの頃から過ごしたそのバレエ教室で習ったこと、体験したこと、先生から受け取った大切なことや言葉を思い出しました。そして、案外、人は変わらないものだなぁと、ふとおかしくもあり嬉しくもあり。今、自分が大事にしていることは、子ども時代に教わったことが基盤になっていたりします。
そしてもう一人、私が病院にアート作品をコーディネートする仕事で大変お世話になった方も、大往生で旅立たれました。北海道大学医学部を卒業して東京へ、そして埼玉を中心に大きな病院グループを創設された方でした。その方は、私が生まれた年に戸田市に病院を開業し、地域医療に貢献されました。ご逝去にあたり埼玉新聞に記事が出ていました。そこには、開業してから10年目に、とある会報に寄稿された文章が載っていました。素敵なので、以下引用しますね。

「患者がたくさん来る。しかし私たち医師は病気に至らないための予防と健康管理が本来的な仕事ではないか。戸田市も発展し、病院も大きくなったのは大変うれしい。病院は10周年、やがて20周年、30周年と歩み続けていくだろう。しかし、将来は健康や予防について、私たち医師に相談し、語り合うことのできる『心の病院』としてもありたい」「戸田市民の健康管理の殿堂として存続していくことができたならば、こんなにうれしいことはない。「病院通いよ、さらば!」と言う時代が到来することを市民や県民と一緒に考えていきたい」 〜中村隆俊(TMGグループ名誉会長)埼玉新聞(2022.12.16)より抜粋。
理想通りにいかないことが世の常ですが、だからと言って何も志を無くすことはないのです。忘れないでいれば、人はきっと、無意識でもそれに沿うような行動をするだろうし、回り道をしたとしてもきっと知らないうちに修正しながら志す方向へと向かうのではないでしょうか。大切なのは、大志であれささやかであれ、こうありたいという想いを抱いたら忘れても思い出し、人知れず続けることなのかなと思います。
お医者さんは、病院やクリニックで患者さんを診るだけがお医者さんではなく、私たち一般人の健康な毎日のために医学的知識をもとに本に書いて伝えたり、心身の処し方をわかりやすく話したり、人に寄り添い、話に耳を傾けて安心させてあげたり、色々あるのだと思います。
中村名誉会長は、お会いする時はいつも、まずすっと手を差し出して、こちらの目を見て大きな手でしっかり握手をしてくださいました。そんな人とのコミュニケーションの姿勢も、きっと人や心を大切にされていたからなのだろうと、今懐かしく思い出します。