いとおかし。

 

私のお仕事の現代陶芸ギャラリーで個展をしていただいた川崎毅さんの作品は、どこか人をリラックスさせるものがあります。なんとなくほっとしたり、じっと見ているとその小さなオブジェの中に入り込んでしまえたり、懐かしさを感じたり・・・様々。

そんな川崎さんは会話の中でしばしば「・・・それでは面白くありませんから・・・」とおっしゃるのです。どういうことかというと、合理的にやるならばそちらの道を行くとしても、それでは面白くないので遠回りして違う道を行く、ということ。川崎さんの作品制作は、おもしろく為されています。だから、一直線じゃなく行間に漂うような言葉にできない何かを纏っていると感じます。目的地までまっすぐ急ぐより、遠回りするとその道中は様々な風景があり、発見に満ちていていることに気づきます。

 

日曜日は、中尾先生と一緒に講演会に行きました。対話型美術鑑賞にまつわる勉強で講演タイトルは『アート&コミュニケーションで鍛える先が見えない時代のサバイバル術』!

中尾先生の仕事仲間だった福のり子さん(京都造形大学教授・アートコミュニケーション研究センター所長)がナビゲーターで基調講演をされた後、臨床心理学の伊達隆洋先生のワークショップ、そしてディスカッションで、合計5時間!(笑)福さんは、アートや人に対するパッションに溢れていて大変素敵な女性でした。

おっしゃっていたことで私が共感したのは、わかったつもりにならないこと、なぜか?と問いを立てること、正しいことよりも面白いこと。そして、良いナビゲートは、ナビゲーターがいたのか?と思わせるくらい自然にみんなが自主的に動けること。

そんなことをこの講座では伝えていました。・・おや、これは中尾先生の講座でいつも先生がやっていることだ!

私が感じている中尾先生のアートレクチャーは、アートの厚み、深い魅力、芸術の歓びをみなさんに味わっていただけるように、どこまでもナビゲート役を務めてくださるのが誠実で素晴らしい。先生ご自身が美術が大好きで、分かち合うことが楽しい、そんなレクチャーです。

 

伊東先生が前におっしゃっていたのを思い出しました。真理に関して、真・善・美と言いますが、「面白い」、古語的にいうと「いとおかし」にはこの全部が入っていて、さらにとらわれない軽やかさがあります。

おもしろい、とは実はすごく深い意味があるんですね。

一つの答え、正しさを求めずに、まず「good listener になって」(福さんがそう言っていた)、それはなぜだろう?と根拠や前提を問うてみること、そんなことがおもしろく豊かな日々につながるのかなと感じました。