絵画鑑賞入門講座、1月はマティスの赤い絵からスタート。参加者の方からのリクエストでピックアップしたこの作品について、中尾先生とみんなで鑑賞しました。
マティス「赤いアトリエ」
「赤いアトリエ」を見て気持ちよい〜と感じたり、椅子やコップが宙に浮いているみたいで居心地悪い〜と感じたり、さまざまな見方、感じ方がありました。
まずは先生が皆さんを促しどう感じるかと問う、意見が出る、それを先生が受け止める、そして他の感想が出る、参加者同士がやりとりする、そこに先生がちょこっと意見をはさむ・・・
1つの絵を見ながら、こんな具合に言葉の輪がどんどん広がって行きます。自分の頭の中だけで考えていたことを表現し、それに対する反応があると、別の角度からの視点が生まれます。
へぇ〜そういう見方があるのか。
ふ〜ん、そう感じる人もいるのね。
そして、若冲も。
伊藤若冲「群鶏図」
若冲は江戸中期に活躍した絵師です。京都・錦小路の青物問屋に生まれ、子どもの頃から絵を描いてはいましたが、専念したのは40歳から。色彩が豊かで、これでもかという細部に至るまでの描き込み様。2016年に東京で生誕300年を記念する展覧会が開かれ、入場者の待ち時間が3時間から5時間というのでも話題になりましたね。
若冲は技巧派と言える緻密な描写力で目を引きます。中国の色彩豊かな絵に魅かれて多く模写をしたり、薄墨でマス目を作りそこに色を入れて絵を描く手法を使ったりと、おそらく探究心はかなりのもの。画風は多彩です。
参加者の方から、升目を使ってグラデーションを表すのは西陣織と同じという意見がありました。これは、西陣織では色を指定するために方眼紙を用いて下絵を描くそうで、その描き方を若冲が応用したと言われています。
超絶技巧と観察力に目を奪われますが、動物を描いた作品には若冲の動物への温かな眼差し、ユーモアが感じられるという意見も出ました。
先生からは、若冲ブームの立役者辻惟雄さんのお話と同時に、巧いだけでなく精神におけるプリミティビティーが若冲の魅力、とにかく好きに気持ちのままに描いていることが伝えられました。参加者のおひとりから「ルソーみたい!」というご意見が飛び出し、なるほど〜
中尾先生は「生命の等価を感じる。若冲にとって動物も植物もすべて同じように等価であり、絵描きとしての根っこはナイーヴなんです」とおっしゃっていました。
さて、若冲についてはまだまだ話し足りず、来月は参加者リクエストの「ゴッホ」と、引き続き「若冲」に迫ります。
いつ参加しても初めての新鮮さと新たな発見に満ちた中尾流絵画鑑賞入門講座。いつからでもぜひご遠慮なくご参加ください! お待ちしています。
*「若冲」の名は、老子の言葉からとられたと言われています。
大盈(だいえい)は冲(むな)しきが若(ごと)きも、其の用は窮まらず
大盈とは、水や空気などを指し、遍満しているもののこと。充ち満ちたものは何も無いように見えるが、その働きに限界はなく、絶対になくならない永遠であるという意味。
*いつからでも入門、いつ来ても新鮮な絵画の世界。美術は生きる歓び!
中尾陽一「これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞入門講座」
第46回 若冲その2 と ゴッホ
2018年2月25日(日) 13時から15時30分
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