
中尾陽一先生の「これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞入門講座」。
7月は6月に引き続き、イギリスの画家ターナーの後編。後編では、ターナーと並ぶイギリス風景画の巨匠、コンスタブルを見ていきました。
コンスタブルは、ターナーと1歳違いで1776年生まれ。この二人は生まれや育ちにはじまり、画家人生全般で何かと違いがあります。
ターナーは、14歳で既にロイヤルアカデミーに入学を許され、27歳にしてロイヤルアカデミー正会員に推挙される、つまり一流画家と認められるという早熟の天才ぶりですが、コンスタブルは24歳でロイヤルアカデミーに入学して53歳でようやく正会員に選ばれました。
いつものように、コンスタブルの作品はどんなものかをスライドで見て行きます。
ターナーとは違いますね〜
「空が画面の半分を占めていますね」
「水面の描き方がすごい」
「イギリス的というか、すごく真面目に描いている印象」
参加者からはどんどん言葉が出ます。コンスタブルの絵の特色を的確にとらえている感じ。
イギリス国内外を動き回って(!)作品を制作し、生活はやや破天荒で変わり者だったターナーと比べると、コンスタブルはイギリスから外へ一度も出た事がありません。どこへも行かず、馴染みのある風景を描きつづけました。そして家族や友人を大切にしたそうです。
干し草車 130x185cm 1821年
一見、なんの変哲もない風景の中に瑞々しく詩情あふれる印象を描き切っているコンスタブルは、イギリスでの評価よりもフランスで評価が高かったそうです。
美術史的に言うと、この頃までは風景を描いた「風景画」というものはなく、風景が描かれているのは「歴史画」でした。そんな時代に自然を感じさせる「人間と自然の調和」を描いたコンスタブルは、風景画の開祖的存在。画面の上に微妙な色調の色を置いて表現するコンスタブルの手法は、印象派の技法、点描の先駆とも言われます。
主教の庭から見たソールズベリー大聖堂 1823 年
どの部分もとても生真面目に描かれているけれど、スケール感がありますね。
1824年頃 Seascape Study wir Rain Cloud
完成度の高いコンスタブルの絵。その下絵では、感動をそのまま描いていました、こんな風に躍動感いっぱいに。
「コンスタブルの絵は、どこもかしこもちゃんと描いてあって、ジクソーバズル的というか・・・」
という面白いご意見が出ました。
「ジグソーパズル・・?・・?・・?」(そのココロは???)
・・・
と、しばらくあれこれ意見の交換があった末に、
「わかるわかる、なるほどジクソーパズルね」
となりました。
コンスタブルの作品は、細部まできっちりと描かれていて、ジグソーパズルにするとおそらくどのパーツにもストーリーが見える、ある。ひとつひとつ組み合わせて行って、最後の1ピースで、みごとに、ハイ完成!、さぁ壁に飾ろう〜〜と思うような作品。お部屋にあったらいいなと思える風景画。
参加者の皆さんの感想、ご意見がどんどん出て、思わず聞入ってメモをとるのがやや手薄になったワタクシ。その皆さんの集中力と先生とのやり取りが、ずいぶん変わって来たな〜と感じます。毎回参加して下さるからということでは片付けられません。この中尾流全体が目指すところの、
知らない絵を見た時に、どう思うか感じるかを言葉にできるようになる。
が、目に見えて育まれている。中尾先生のリードで、その時集まった参加者からどんどん引き出されていくことば。
すばらしい〜〜〜!
ターナーのような天才破天荒ウサギさん型の芸術家も魅力的、でも、ちょっと地味だけど着々と我が芸術を完成させるカメさん型芸術家の存在感もすごい、ということが、後編を通して見えて来たかなと思います。
コンスタブルの言葉。
「この広大な世界に、同じ日は二度となく、同じ時間も二度とない。そして天地創造以来、一本の樹に同じ二枚の葉はない」
・・・と実況中継としてはやや中途半端ですが、お後がよろしいようで・・・。
7月のオヤツはこちら。
黒米の皮にずんだあんのお大福。集中するとお腹がすきます。
ご参加の皆さま、中尾先生、7月も楽しい白熱、ありがとうございました。
さて、次回は8月27日(日)の13時からです。
次回のテーマは、真夏にはやっぱり、
「アンリ・ルソー」
私、大好きです。夢の中で見たようなルソーの世界。楽しみ〜〜〜〜♪
ぜひご一緒しましょう〜
8月告知文はまた中尾流コーナーにアップしますので、お楽しみに。
*美術のことを知っていても知らなくても、ただ楽しもう!〜
中尾陽一主宰 これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞入門講座
第40回 アンリ・ルソー
8月27日(日)13時から15時30分