*「オルセーのナビ派展」三菱一号館美術館 入口
気持ちよい4月第四日曜日は、中尾陽一先生の、
ボナールとナビ派
ナビ派というと、流れとしておよそ「ゴーギャンとナビ派」という組み合わせになるらしいのですが、ここは中尾流のアングルから、ボナールを中心にナビ派の作品をたっぷり検証、味わってみました。
まずは、前回の講座中で参加者の感想の中に名前が出た日本の画家について、先生からプチインフォメーションがありました。こんな風に中尾先生は、その回のテーマ以外でも講義の中で話題になったことを、宿題のように(笑)持ち帰っては、みなさんの世界の枠を拡げるようにフォローして下さいます。
さて、そして本題。
ナビ派のナ「ナビ」は、ヘブライ語で「予言者」の意味。新しい絵画、未来の絵を描こうという若手画家たちの意気込みが感じられます。
例によって、ナビ派の画家の作品を大まかにスライドで流し見て行きます。
ボナール、ヴュイヤール、ドニ・・・
「どうですか? まずは見た感じでナビ派の絵、どんな印象ですか?」
竹久夢二に似ている、平面的、服の模様が日本的、装飾的・・・
など、皆さんからひと言ずつ。上の作品は「日本かぶれのナビ」とあだ名されたボナールの作品。確かに細長い画面や洋服の模様など、日本的。そして女性のなよっとした曲線や顔立ちが竹久夢二の女性像を思い起こさせますね。
ナビ派は、自然を再現しようとした印象派の後のゴーギャンの教えを汲んで、絵の中の意味や物語性を超えた色彩表現を特色とし、題材には日常の風景や、フランス語のアンティーム(親密な、私的な…)に表される室内、そしてその裏側の神秘を描いている作品があります。
「このヴュイヤールの「ベッドにて」は、深い安らぎも感じれば死も感じますね」
*記念すべき3年目の36回から、ビデオ撮影記録開始(気づくのが遅かったかも)
参加者から
「どうもこのナビ派はどこに価値があるのか、皆目わかりません。みなさんの感想を聴いてみたいと思っています」
という意見も。ナビ派の絵はカラフルで華やか、ごくフツウの日常風景が描かれていて、絵として確かにきれいです。でも「で、それで?」と言いたくなる。その絵はいったい何が言いたいのかがハッキリ伝わってくるタイプではないのですね。西洋画には定義がある、という定義にあてはまらないというご感想。
いぃ〜んです! そういう正直なご意見、ご感想はそのままブラボーです。
それに対して中尾先生、
「わからないところが、傑作、なんです〜」
ニヤリとつぶやく・・・。
ナビ派の絵は、人物も模様もすべて同じ価値、並列なのです。実際、絵の印象は平面的です。ゴーギャンからは、印象派のように絵の具を混ぜて表現するのではなく、「黄色に見えるなら黄色を塗りなさい、影が青く見えるなら青で」と生のままの絵の具を使うように教えられたナビ派の画家たち。説明よりも前に、色でその絵が成立しています。どちらかというと、具象画でありながら抽象画のよう。
説明的に絵を描くよりも、本質を描こうと試みたのが、ナビ派の人々でした。
ナビ派について、気づいた特色を参加者ひとりずつ、あげていく。
先生とのやりとり。
いろいろ出ました。
ナビ派ってある意味おおざっぱ? ちょっとホッとするよね〜、好きかも!
なんてお声も。
日常的に見えて非日常。どこかに違和感、不安感、神秘性があるのもナビ派。
先生からとっても面白いことを教わりました。
絵を描いている時に、その絵を上下ひっくり返して見てみるんですって。
「描く時には無意識に、これは山でこれは空で・・と当り前に思い込んで描いてしまっている。それを、ひっくり返して見るんです。ひっくり返して見ると、色の秩序のバランスがとれているかどうかが分かる。良い絵は、意味を取り払っても、抽象的絵画として成立しているんですよ」
首をひねってひっくり返ってみたら、・・・なるほどね。
私たちの脳は、目に見えるものに意味を探し、ストーリーを持たせるのが癖ですが、モーリス・ドニの言葉のように「絵画が軍馬や裸婦や何らかの逸話である前に、本質的に、一定の秩序のもとに集められた色彩で覆われた平坦な表面である」として見ることは、当り前を疑って見直してみる、面白い遊び、ゲームになるかもしれません。
これこそ、プロトマニアの中尾流的!!
*オヤツとお茶と先生のプリント
記念すべき3年目の第36回も、皆さまの活発で自由な意見や感想、中尾先生の名ガイドで無事終了。今日も白熱。みなさま、おつかれさまでした。
さて、寺子屋世話人は、ちょうど開催中の「オルセーのナビ派展」に行きました。会場では、中尾流で聴いたこと、皆さんの感想や印象とは違うことが解説ボードに書かれていたりします。でもね、それがおもしろいところ。美術館の学芸員の方が解説することは、ひとつの解説、見方。唯一正しいわけではありません。ふぅん、そうなんだ〜と横目で見たり、なるほどと納得したりしながら、あらためて作品を味わって来ました。実際の絵を見る事が出来るのは、幸運ですね。
こんなワイワイガヤガヤの中尾流は、5月から4年目に突入します。5月の画家は「バルテュス」です。ご案内の準備ができましたら、またジャーナルと中尾さんのコーナーでご紹介します。ぜひ一度遊びにいらして下さいね!
帰りは夕焼け。
*美術のことを知っていても知らなくても、ただ楽しもう!〜
中尾陽一主宰 これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞入門講座
第37回 バルテュス
5月28日(日)13時から15時30分