芸術とは

芸術と真理

 

日常や真実を探求する中で、芸術が役に立つことはありますか?

 

芸術とは美を指し示します。芸術は美についてわたしたちに語りかけます。美、真実、愛は、ひとつであり、同じものです。これらは本源であるものに属しています。ですから、芸術は本源であるものを指しています。それが芸術の役目です。

 

芸術はどうやって役に立っているのでしょうか?物理的な客体である絵画や本が特別、本源であるものを指し示すとは、どのように可能なのでしょうか?ほかのものが本源を指し示すことはないのでしょうか?

 

後半の質問についてまず考えてみましょう。原則として、どんな客体も本源を指し示しています。ですが、本源の本性を示すのは、すべての客体の機能ではありません。ほとんどの客体と違い芸術作品は特に、いわば意図的に、美に直接、向かっているものです。芸術作品は、音楽では聴覚、造形美術では視覚といったように、五感を用いているとも言えます。(とは言っても、どの芸術作品も実際にはすべての五感を用いているとも言えます。絵画にリズムがあり、協奏曲に色彩がある、といったように)。一点の芸術作品は、物理的、感覚的な客体であり、見ている者、聴いている者を本源に連れていく力を持っています。真の芸術とは本源から、ヴィジョンから生まれているのです。精霊から、とベートーヴェンなら言うでしょう。バッハであれば、神から、と言うでしょう。もちろん、こういったヴィジョンを物理的な形にし、感覚的言語に翻訳するには技術的な能力が問われます。これを聴いたり観たりすると、さまざまなステージが逆の順序で流れていきます。感覚的なメッセージから根源的で精妙な直感に移り、そこからその源に移ります。そして、その源であるわたしたち自身の壮麗さの内にひとりきりで残されるのです。

 

『今、永遠であること』 フランシス・ルシール著 わたなべゆみこ訳 より抜粋