
今月のプロトマニアレクチャー「これまで誰も教えてくれなかった〜絵画鑑賞入門講座」は、
世紀末ウィーンの芸術家、クリムト。
クリムトは頽廃的なムードをたたえた作品が印象的。
デザイン的でもありますね。金箔をふんだんに使っていて、単純に美しくもある。
こんな作品もある。
私はクリムトのデッサンが大好きなのです。
線がこれほど多くを表現している、ということに、まず息をのむ。
音、匂い、空気の重さ、光、… 触覚までもが刺激されるような線描。
クリムト人気はとても高いのです。
とにかく美しいから? 金箔や色がちりばめられている作品は美しい?
女性が官能的? 絵が分かりやすい? これならもらって部屋に飾ってもいいかも?
本当のクリムトの魅力というのは何なのか?
若い時にヨーロッパへ行って、
それまであまり好きではなかったモーツァルトがとても好きになりました。
それをフランス人のヴァイオリニストに言うと、ちょっとバカにしたような表情で、
「モーツァルト? 俗っぽいね」
と言われました。
そんな風にクリムトもおそらくどこかで、
「俗っぽいね」
という目で見られているところがある。
でも思うに、俗っぽさの中には聖なるものが宿っている。
世界はいつでも両方を孕んでいる。
ジャンヌダルクが正義のために多くの血を流してしまったように。
中尾さんがどんな風にクリムトを観ているのか、とても楽しみです。
そして、私のクリムトがどんな風に見え始めるのか…
プロトマニアの絵画鑑賞は、知識を増やすことが目的ではなくて、
知識を得ながら感じること、感じ方を開拓していく体感、がおもしろい。
中尾さんのリードはすばらしくて、押し付けない、でも引かない。
こんな美術の時間が子どもの頃からあったら、
きっと、美術は生きる歓びに溢れていると知り、
当り前のように美術が生活の中に共存しているだろうな。
ここは寺子屋だから、世間と違っていいんです。
浮かれポンチな感想も、変人的な発想も、マニアックな掘り下げも、ぜんぶオッケー。
既成概念を脱ぎ捨てて、目玉を洗って(笑)、
たった今生まれたばかりの赤ちゃんのような目で耳で鼻で皮膚で、
いろんなものを眺め味わってみたいものですね。