テヅカクンは、ずっとそこにいたらしい。
最近、思わぬことで再会した時、テヅカクンはとても気の弱そうな印象だった。
髪の毛ボサボサで賢くて気の良さそうな、だけどまったく冴えない感じ。
ちゃんと思い出せば、これまでカチンと何かがぶつかったり、突然カッと熱くなったり、
酸欠みたいにパクパクしてしまう時、
必ずテヅカクンが何食わぬ顔してぼーっとそこに立って見ていた、
その平然とした感じが最初とっても癇に障った。
そのうちテヅカクンがいると私は不幸になる、嫌な目に遭うという回路ができた。
アレルギーみたいに条件反射で、全身全霊で拒否して、
もう!どっか行っちゃってよっ、と心の中で叫んだ。
だからずっとテヅカクンのことを封印していた。
テヅカクンのことは、無視だ。
誰かや何かを無視することは、心の中の殺人です
と、高校生の頃に習った。
テヅカクンのことは、いつの日からか怖くて絶対に認めちゃいけない存在になって、
こころのなかでサツジンしていた。
そして、テヅカクンは居るのに居ない、
『 無いもの 』
となった。